最先端のサーバーチップは、そのパフォーマンス向上の可能性で注目を集めていますが、次世代プロセッサは旧来の設計よりも動作温度が高くなるため、データセンター事業者は、チップメーカーからの限られたガイダンスの中で何をすべきかを見極めるのに苦労するでしょう。 それと同時に、エネルギー効率化の取り組みにおいてIT機器が果たす役割に対しても、厳しい目が向けられることになります。これらの相互に関連するトレンドは、Uptime Instituteが今年のデータセンターについて予測する上位に挙げているものの一つです。 「事業者は、高温になる新しいサーバーチップに苦戦することになるでしょう」とUptimeのリサーチアナリストのジャクリーン・デイビス氏は同機関の2023年データセンター予測に関するウェブ会議で述べています。その一方で、「エネルギー効率の焦点が拡大し、IT機器そのものも含まれるようになるでしょう。これは遅すぎるくらいだと考えています」とも語っています。 上昇するサーバーの発熱量 現在建設されているデータセンターは、経済的競争力と技術的能力を10年~15年は維持する必要がありますが、新しいチップ技術によって、事業者は従来のデータセンター設計ガイドラインに疑問を呈するようになっています。 「データセンターの設計は、サーバーの電力と冷却の要件に対応しなければなりませんが、長い間、これらは一貫していました。設計者は、1ラックあたり4~6キロワットで計画することができました。ITのリフレッシュを繰り返しても、電源や冷却のインフラストラクチャをアップグレードする必要はありませんでした」とUptimeのリサーチディレクターであるダニエル・ビゾ氏は言います。 今、それが変わりつつあります。1ラックあたり、1サーバーシャーシあたりの電力密度はますます高まっています。例えば、インテルの第4世代Xeonスケーラブル・プロセッサ(コードネーム:Sapphire Rapids)の熱設計消費電力(TDP)は最大350ワット、AMDの第4世代Epycプロセッサ(コードネーム:Genoa)のTDPは最大360ワットあります。 「今後の製品ロードマップでは、今後たった数年のうちに、TDPが500~600ワットのサーバープロセッサが主流になる予定です。したがって、この傾向は、主流のサーバーが1台あたり1キロワットに近づいたり超えたりするにつれて、設備設計の前提を揺るがし始めることになります」とビゾ氏は言います。 すでに、GPUをベースにした特殊なハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)システムでは、ピーク電力でチップあたり数百ワットを必要とすることもあります。これらのシステムは、熱出力が高いだけでなく、温度限界も低くなっています。 「より多くの熱電力を生産するため、冷却システムには事実上二重の負担がかかります。そしてその多くは、より低い動作温度を必要とします」とビゾ氏は説明します。低温に到達させるために大量の熱を除去することは技術的に困難であり、そのため運用担当者はこれまでとは違った方法で冷却に取り組まなければならなくなる、と同氏は言います。例えば、データセンター事業者の中には直接液体冷却への対応を検討するところも出てくるでしょう。 ニッチなHPCアプリケーションがもたらした設計上のジレンマは、高TDPプロセッサがエンタープライズサーバーの主流市場にもたらす電力消費と冷却の課題に対する早期警告と考えることができます。「これは今はある程度推測するしかありません。一般的なITラックの電力はどうなるのでしょうか?高密度ラックはどこまで威力を発揮するようになるのでしょうか?今後10年間、データセンターはどのような冷却モードに対応する必要があるのでしょうか?」とビゾ氏は問いかけます。 低密度のラック設計を続けるという保守的なアプローチも考えられますが、それではデータセンターが制限されすぎたり、時代遅れになったりする危険性があります。しかし、ラックの高密度化を求めるような、より積極的な設計アプローチは、十分に活用されていない容量や能力に過剰な出費をするリスクを高める、とビゾ氏は警告します。 「事業者は、新世代のIT技術を扱う上で、さまざまな選択を迫られることになるでしょう。空気温度を制限し、効率の低下を受け入れるのもよいでしょうし、あるいは、(米国の業界団体である)ASHRAEがクラスH1(熱基準)で推奨しているように、こうした温度制限のあるITシステム専用の環境を構築することで、設備効率への打撃を最小限に抑えるのもよいでしょう。あるいは、直接液冷への転換を促進することもできます。ここでは半導体の物理学が物理的な原動力となっていますが、インフラストラクチャの経済がデータセンターの設計と運用を形作ることになります。また、チップメーカーからのガイダンスもほとんどないため、適応力がカギとなるでしょう」とビゾ氏は言います。 エネルギー効率化の焦点はITに移行 より高いIT効率を実現するための企業やデータセンター事業者に対するプレッシャーは高まり続けるだろう、とUptimeは予測しています。 これまではその責任は施設側にありました。持続可能性と効率性の要求の矢面に立たされたデータセンター事業者は、過去15年ほどの間に電力使用効率(PUE)を大幅に向上させた、とビゾ氏は説明します(PUEは、データセンター全体が使用するエネルギーに対するIT機器が使用するエネルギーの比率を測定します)。空気分離、より柔軟な温度許容値、冷却、ファン、配電の厳格な制御、再生可能電源の使用などの取り組みを通じて、施設の資源の使用効率は大幅に向上しています。 「データセンター事業者は、持続可能性に向けてかなり多くの取り組みを行っています。その一方で、IT部門は概してこうした議論から遠ざかっています。これではますます立ち行かなくなります。なぜなら、単純に、効率化向上という点で残されたものは、ITのエネルギーパフォーマンスに隠されているからです」とビゾ氏は指摘します。 Uptimeによると、次の4つの主要分野でプレッシャーが高まっています。 新しい大規模データセンターに対する自治体の抵抗:2019年以降、電力と土地の確保をめぐる懸念から、データセンターの新規建設に対する規制が強まっており、今後も強まる可能性が高くなっています。例えば、ドイツ・フランクフルトでは、土地利用の拡大や街の景観の変化を懸念して、クラウドやコロケーションの新設は特定のゾーンに制限されています。 増加するデータセンターの容量をサポートするために利用可能な送電網の制限:Uptimeは、アイルランド・ダブリンと米国バージニア州北部の2つの地域を挙げ、送電網がひっ迫し、電力会社が発電または送電容量の不足のために新規接続を一時停止または制限していると説明しています。 持続可能性と炭素排出削減に関する規制の強化、および報告要件の厳格化:欧州連合(EU)では、データセンターは新たにより詳細なエネルギー消費量報告要件に直面しており、例えば、エネルギーパフォーマンス指標を公開する必要があります。Uptimeによると、同様の取り組みが米国でも始まっています。 高いエネルギーコスト:エネルギー価格、ひいては電力価格は、ロシアのウクライナ侵攻以前から上昇基調にありました。2021年の欧米市場では、すでに電力先渡価格が高騰していました。電力コストは上昇の一途をたどっており、変動しやすい環境が作り出されています。…
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